駐輪場ノスタルジーが消えてしまった日
世の中はどんどんハイテクになっていく。
駅前の駐輪場も然り。
以前の駐輪場にはシニア人材と思しき見張り番のおじちゃんがいた。
入り口の小屋に常駐し、利用者の自転車を管理し、みんなが気持ちよく使えるように声をかけ、たまには叱責もしてくれていたおじちゃん。お天気のいい日には近所の人と談笑したり、道行く若者にも挨拶運動的なことをしてくれたり。
どこか昭和で、どこかノスタルジーで。ほっこり出来る一場面。
そんな光景を見るのが好きだった。
それがどうだろう。
リニューアルオープンと題し、駐輪場は文明開化を背負って生まれ変わったのである。
入り口の小屋は撤去され、ピッピッと操作して自転車の出し入れが出来る機械が設置された。駐輪場自体も以前とは比べ物にならないくらい綺麗になり、整然としている様はやはり気持ちが良い。だがしかし。当然そこにおじちゃんの姿は無い。無論談笑している場面も無くなり、そこに流れていた暖かい空気は冷たくなってしまった。
綺麗なうえに便利なのは素敵なことである。
しかし便利さを手に入れると、そこにあった温かみは無くなってしまうこともある。
それはなんとも切なく、寂しい。おじちゃんは元気にしているだろうか。
こうやって少しづつノスタルジーが、人情が、無くなっていく。
これが時代の流れというものなのか。
人情なんてものはあればあったで面倒臭かったりもする。しかし完全に無くなってしまうのは寂しい。それは昭和生まれのわたしのわがままなのだろうか。
おじちゃん、今まで駐輪場と街を見守ってくれてありがとうございました。
どうかお元気で。